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10年前にネパールを襲った地震で全壊したゲストハウス=2015年5月23日、中部シャブルベシ、矢木隆晴撮影
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 ネパールの首都カトマンズで宿泊施設を運営するリラ・ナス・バンダリさん(43)はこの10年間、生きる意味を自問し続けてきた。

 2015年4月25日、マグニチュード7・8の大きな地震が母国を襲い、9千人もの命が奪われた。

 その日は、お客さんを車に乗せて東部の街に出かけていた。地震に気づき、仕事を任せていた妻に何度も電話をかけたが、つながらない。

 不安が募り、半日かけて戻ると、宿泊施設があった高層の建物は崩れ落ち、半分の高さになっていた。妻と2人の子どもは、1階の住居にいたはずだ。

 12時間後、崩れた建物の中から、「兄さん」と助けを呼ぶ泣き声が聞こえてきた。近所の住民と一緒にがれきをかき出した。食堂で働いていた従業員のラメシュ・カトリさんだった。

 彼が無事だったのだから、妻子も生きているはず。そう祈った。

 だけど、愛する家族はなかなか見つからなかった。

 それから12日後。

 重機を使ったがれきの撤去作業中に、女性の遺体が見つかった。顔はつぶれ、腹のあたりは異常な形に膨れあがっていた。

 他人には判別できなくても、誰だかすぐに分かった。妻のサンギタさん(当時32)が愛用していた、真っ赤なドレスを着ていたから。

弟や親戚、宿泊客も犠牲に

 その後、8歳のスウェチャさ…

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